2022/07/24 ワンダーフェスティバルにて
「メカトロピュータ」のレジンキットを販売しました。
ピュータに関しての詳細は前回の記事をご参照下さい。
前記事に製品付属のマニュアルを掲載していますが、更に製作に関するフォローが出来ればと思い細かくポイントを記述していきます。
ざっと目を通してもらった上でマニュアル見ながら製作すれば失敗も減ると思いますのでお付き合い下さい。
模型は人によって使うツールも手順もマチマチです。
ここに書かれた内容は「自分はこうした」という一例であり、ベストかどうかは分かりませんが、自分の塗装見本品はこのやり方で仕上げています。
------------------------------------------------
長くなるので項目毎に目次作っておきます。
------------------------------------------------
■パーツ洗浄
*透明パーツは3Dプリント品なので、この洗浄作業は必要ありません。マニュアル別紙を参照し、ヤスリがけの後に削った粉が気になる場合は軽く水洗いする程度でご使用下さい。耐久テストとして数日間水に浸したり、直射日光下に数日放置などしましたが、割れなどは起きていません。使用レジンはこちらの物です。
まずレジンに付着している離型剤を落とします。
ボールに入れたパーツに「キッチンクリーナー」をプシュプシュ吹きかけます。
しばらく放置すると徐々に泡が消えていくので、そこに結構熱いなーってくらいのお湯をかけてかき混ぜます。
パーツを取り出し「ジフ」を付け歯ブラシで磨いた後ザルに。
(ボールやザルは模型専用に用意を!)
全パーツ磨き終わったら水道水で洗剤を洗い流します。
水を切って古新聞の上にでも並べてしばし乾燥させましょう。
この方法で僕はほぼ大丈夫でしたが、フル塗装品の足首だけマスキングテープに塗装面持っていかれました。
洗浄が足りなかったのかもしれません。
(一番確実なのはパーツ全面に軽くヤスリがけする事ですが大変!)
■ゲート処理
レジンキット(ガレージキット)には一般的にゲートと呼ばれる、型に樹脂を流し込む際に出来る不要な部分があります。これを除去していきます。
太ももパーツを例にすると(上に位置している物が製品の状態)
① まず大まかにニッパーでカットし
② カッターで整える。画像の「アートナイフプロ 曲線刃」がオススメです。
③ 400番くらいのヤスリで平滑になる様に磨く。当て木のある固い物を使うと良いです。画像は「タイラー400番」
④ 求める仕上がり具合にもよりますが、更に「600」や「800」番のヤスリで磨くと傷が目立たなくなります。画像は「神ヤス10mm 800番」
こちらのパーツはより多くのゲートで繋がっています。
各画像の下段を参考に不要部分を除去して下さい。
マニュアルにあるパーツNO.31は不要なゲートが多めです。右の形になる様に除去して下さい。(頑張って~!)
こちらも各所ゲート処理を。
下段画像の手首と太もも付け根パーツは画像左の状態を参考に仕上げて下さい。
■ポリキャップ使用部の組み立て
足首付け根のパーツは市販のポリキャップを挟みます。
ガンプラなど作ってる方は余ってる3mm径の物が流用出来るかもです。
ここではWAVEさんの PC-03を使用。
この足首付け根パーツは瞬間接着剤を使って左右の貼り合わせが必要です。
① 余分なポリキャップの軸はニッパー等でカット。
② ズレが出ない様に指で押さえつつ普通の瞬着を隙間に少量流し込み、はみ出した接着剤は硬化後ヤスリがけで整える。ゼリー状を使う場合は予め片面に塗って貼り合わせて下さい。
③ ポリキャップがゆるい場合はポリキャップとレジンの隙間に極少量の瞬着をちょんと置き、
④ 隙間に流れる様にポリキャップをグリグリ動かして下さい。これで渋みが調整出来ます。(硬化後もまだ緩ければ再度同様に。ポリキャップとレジンは接着出来ない事を利用してレジン部の穴を狭くする訳です)
■市販関節の組み込み
マニュアルに掲載している様に、このキットにはイエローサブマリンさんの「関節技」を2種使用します。
ディスクジョイント製品には軸の太さが 2.9mm とありますが、自分が使用しているWAVEさんのピンバイスの2.9mmを使うと少し緩くなる印象です。
その為 2.8mm のドリル刃を用意して頂いた方が良いかなと思います。
上のWAVE製ではなく、通常のピンバイスに使用するドリル刃は通販店だとモノタロウ(2.85mmというサイズも売っています)などが買いやすいと思います。
レジンは柔らかいので刃の材質に拘らず安い物を選んで大丈夫かと。
(あまり安い物だとドリル径が適当かもしれません)
2.8mmだとかなりキツイのですが、マニュアルで軸を短めにカットする様に指定している箇所なんかは丁度いいかもです。ドリル刃を微妙に傾けてグリグリする事で無理やり穴を少し大きくする事も可能かと。
無理に差し込むと抜けなくなりかねないので注意して下さい。
(二度と外さないのであれば多少強引に押し込むのもアリです笑)
首、手首、胴体に使う球体ジョイントの軸は2mmです。
こちらのピンバイスは100均一でも購入可能。
この関節技、一番小さいサイズのみキャップ部分が少しゆるく、遊んでいると外れてくる事が多いです。
それを回避する為に、極微量の瞬間接着剤を使用して固定するのがオススメです。
但し、可動部に瞬着が流れ込むと動かなくなるので注意!
■腕の組み立て
下腕は手首側を2mm、肘側を2.8mmで穴を開けます。
マニュアルにある軸の長さ指定を参考に。
厳密で無くても大丈夫です。
手首は球体ジョイント。
肘はディスクジョイント。
(ダブルジョイントタイプを選んで下さい!)
肩部分は以下の手順で組むのがオススメです。
まずパーツ番号22に31を瞬着で接着。
完全乾燥した後にガイド穴からずれない様に気をつけつつピンバイスで開口。
ジョイントが干渉する時は、ジョイント自体を荒目のヤスリで削ったり、
肩アーマーが付く軸を少しスライスして短くしたりで調整して下さい。
特に塗装してから組む場合は色んな所が塗膜で太りがちです。
予め仮組みして少し余裕をもたせておくと安心です。
肩のジョイントは奥までギュッと押し込んで下さい。
アーマー(パーツ番号15,16)の左右を間違えない様に気をつけつつ。
先に組んだ下腕を上腕に取り付けます。
レジンに開けた穴が緩い場合は、パーツの入っていたビニール袋を四角くカットし、軸と穴の隙間に挟んで押し込むと良いです。
肩付け根パーツは貫通しない様に気をつけつつ2.8mmで開口。
腕はこれで完成です。
■足の組み立て
まず足首。
ここではマニュアル記載より強度が増す手法を記述します。
ジョイントを組む前に2mmの穴を開けます。
ジョイントのキャップパーツを使わずに組み立て、先程の穴をガイドにかかとパーツに開口。貫通しない程度の適当な深さで。
そこに2mmのアルミ線を差し、適当な長さでカット。
つま先パーツにあるガイド穴位置に2mm開口。
靴パーツ前後を接着。
こうすると靴とジョイントが抜けなくなって遊びやすいと思います。
(ここも必要に応じてジョイントの厚みを削って下さい)
余談ですが、丸く巻かれて売られているアルミ線(100均でも購入可能)を使う際は、
こうすると矯正出来ます。
太ももパーツにもガイド穴ありますが、フレームパーツを組んだままの方が開口しやすいです。
スネパーツは上下から開口。
膝アーマーは上から被せます。
ここも塗膜で狭くなりがちなので、予めスネ側面の平面をヤスリがけしてクリアランス確保するのも良いかと。
膝関節はダブルジョイントです!お間違えなく!
(僕は何度も間違って関節組んでます)
太もも付け根は球体ジョイントの一番大きいやつ。
軸が4mm径ですが予め受けの穴が開いています。
軸を短くカットして使いますが、ここもビニール袋挟んで渋み調整した方が良いと思います。
最初キツくても、レジンの受け部はどうしても緩くなってきます。
足首付け根ジョイントは、レジンの軸にレジンの受けなので確実に緩くなります。
ここは接着推奨です。ポージングにはあまり影響無いと思います。
■胴体の組み立て
パーツ8と9は組んだまま開口が楽です。
後は指定のジョイントを挟むだけなので難しい箇所は無いかと。
必要な材料を絞りたかったので首は球体ジョイントを使う様マニュアルに書きましたが、WAVEさんの物などボールジョイントがあればそちらを使った方が好みの角度に調整しやすいです。
球が3mm、軸が2mm径くらいの物なら何でもOKです。
WAVEの物を使う場合、首側からこれくらい浮かせた位置になる様に開口して下さい。
軸付け根まで差し込むと可動範囲が狭くなるので。
軸が緩い場合は瞬着を少し付けてキツくなる様に。
肩関節の組み込み。
ここは軸の向き(長短)と受けパーツに彫刻された1~4個の穴をよく確認して組み立てて下さい。
ここも是非ビニール袋の切れ端を挟み込んで。
肩基部のジョイントを組んだら胴体にはめ込みます。
ここに接着剤を使ってもいいけど、僕は使っていません。
浮き輪の様な首パーツの突起周辺に瞬着を少し付け、上から肩基部パーツを上手くはめ込みます。
最初は接着剤無しで練習して下さい。
(僕は普通の瞬着を使いましたが、硬化まで少し猶予があるゼリー状やエポキシ接着剤を使うと安全です)
腕が付きました。
足付け根もビニール袋挟んでキツめに。
この股関節、足首、肩付け根を適度にキツくしておくとポーズ付けがしやすいので是非。
■完成です!
今回組み上げには5時間くらいかかりました。
ヤスリがけしなければ大分短縮出来ると思います。
その後上の画像の様にスミ入れ、目だけ蛍光塗料(作例はガイアノーツのエナメル塗料使用)で塗装(ブラックライトで光ります)。
透明パーツに関しては追記のマニュアルに加工手順を書いたのでそちらを見て下さい。
無色の透明パーツもブラックライトで光ります。
というわけで大変長い記事になりましたが、少しでも参考になれば幸いです。
近年販売した自身のレジンキットは作りやすさを優先してデザインしていましたが、今回は「今作りたい形を作る」を優先してデザインしたので、模型に慣れていない方にはちょっと難しく感じるかもしれません。
フル塗装するのも大変だと思いますので、まずは白、グレーのままでいいので組んでもらえると嬉しいです。
その上でワンポイントだけ塗ってみる、という楽しみ方も良いと思います。
僕もこのグレーと白だけの見本、結構好きですし。
© モデリズム/小林和史
© Moderhythm / Kazushi Kobayashi